心理的安全性を求めて
自分は開発チームのマネージャー(EM)的なポジションをやっていた時に「何か意見がありますか」とか「質問はありますか」とメンバーに投げかける場面がよくありました。しかしながら、メンバーからは沈黙が返ってくるだけで、自分が期待するような議論や意見の交換は発生しませんでした。
なぜ意見が出てこなかったのか、それはいわゆる心理的安全性が確保されていなかったからだと思っています。
(もちろん、自分の至らなさを含めて...)
自分がリーダーになる前から、このような沈黙はよく発生しました。自分が新しくリーダーになったからといって、長らく根付いたこの流れが変わることはなかったのです。また、心理的安全性を確保することの重要性については十分に理解していました。しかし、実際にリーダーになってみると目標や締め切りを守ろうとするあまり、心理的安全性をおざなりにしてしまっていたのでした。
恐れのない組織を発見
今はリーダー職を離れて開発をメインで行なっているのですが、ふと立ち寄った書店で「恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」という書籍を発見しました。
気になったのですが、荷物が多かったので購入は諦めました。しかしながら、家に帰り気がつくとkindle版を購入していました...。
書評
簡単に内容をまとめつつ、気になった所を紹介していきます。
心理的安全性とは
本書の中で「心理的安全性」は以下のように説明がされています。
対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる
つまり、自分の考えや意見を相手に伝えても対人関係のリスク(eg: 無視される, 卑下される)が発生しないような状況であることが心理的安全性が確保されているといえます。そして、心理的安全性はチームのリーダーがつくっていく必要があるそうです。
では、心理的安全性が確保されていないと何が起きるのか。誰かが疑問や不安に思ったことは胸の内に秘められたまま、自分の耳に入ることはありません。そして、その疑問や不安が的中し大きな問題を引き起こすのそうです。
第2~4章では過去に著名な大企業で発生した問題が紹介されており、第5, 6章では心理的安全性が確保されている企業が紹介されています。
なぜ発言しないのか
過去の自分が疑問に感じたことへのアンサーがあったので紹介します。
大前提として人は無知、無能だと思われることを恐れています。そのため「質問した内容が的外れではないか」とか「よく分かっていないな」と思われたくないのです。 また、上司と部下という上下関係が沈黙に拍車をかけています。「自分が発言することによって上司の機嫌を損ねないだろうか...」とビクビクしています。
ゆえに人は最も安全でリスクの少ない沈黙という行動を選択してしまいます。まさにこれは心理的安全性が確保されていない状況です。
してしまったことに対する後悔は、時間が和らげてくれる。
だが、しなかったことに対する後悔は、どんなものも慰めにならない
──シドニー・ハリス
第4章の1ページ目より引用
心理的安全性のつくりかた
第7章では3つのステップが紹介されています。
- 土台を作る
- 参加を求める
- 生産的に対応する
土台を作る
仕事をフレーミングすることが重要であると何度も登場します。書籍から読み取るにフレーミングとは「目標や目的を明確にして言語化すること(数値など情報を加えても可)」です。
フレーミングの例: 鉱山での従業員の死亡数をゼロにしよう
また、失敗は歓迎されるものであると意識付けが必要になります。失敗は小さく早い段階でした方が、トータル的にはコストが小さくなります。可能性がないプロジェクトをやり続けることがどれだけ恐ろしいことか...
参加を求める
沈黙によって自分を守るのは自然なことであり、その上で発言をしてもらう必要があることを認識しないといけません。また、リーダーは謙虚である姿勢が重要で、全ての答えを知っているおらず、未来を見通すことは出来ないのです。
姿勢に加えて、リーダーは質問の仕方を工夫しないといけません。以下、書籍よりリーダーの質問の鉄則の引用です。
自分は答えを知らない(補足: という立ち振る舞いが必要?)
イエスかノーで答えられる質問をしない
相手が集中して考えを話せるように尋ねる
良い質問の例も紹介されていました。
「自分は何か見落としをしているかもしれない。君たちの意見が必要だ」
自分が全ての答えを知っていないこと。謙虚な姿勢で協力を求めています。
「誰か反対意見のある人は?」
「反対意見のある人なんていませんよ」
「いいか、よく覚えておいてくれ。別の見方は必ずどこかにある。一歩下がって反対意見を見つける必要がある」
自分の意見が絶対ではないことを印象付ける良い質問。素晴らしい上司ですね。
最後に
「恐れのない組織」の読書を通じて、心理的安全性の重要性を再認識して、チームに心理的安全性を確保したいなぁと強く感じました。 いやいや、自分なんかが頑張ったところで、上司を変えることなんで出来ないと思ったのですが、第8章でその考えを見透かされていたかのような内容が記載されていました。
※読みやすさのため、内容をまとめています。
あなたの上司を変えることは出来ない。人を変えることは中々、出来ないが影響を与えることが出来る。
あなたの部下達も、あなたを変えることは出来ないとあなたと同じことを思っている。
だからこそ、自分のチームに対して実戦をしていかないといけない
がんばります。